司法試験(国際公法) written by 76期弁護士 佐藤 和樹
目次
1 はじめに
司法試験・予備試験の国際公法の勉強方法について、悩まれている方は多いと思います。選択科目の1つである国際公法に興味はあるものの、どのような問題が出題され、そもそも出題範囲はどこからなのか等がわからない、そもそも国際公法になじみがないため、選択科目を選ぶ際に初めから除外してしまっている方も多いと思います。
そこで、このコラムでは、司法試験・予備試験の国際公法の勉強方法や出題傾向などについて、具体的に掘り下げてご説明します。
このコラムを読めば、国際公法の出題傾向や勉強方法等がわかりますので、ぜひご一読ください。
2 国際公法の特徴
ここでは国際公法では、どのようなことを勉強するのか、特徴を交えてご紹介します。
国際公法は(国際私法と異なり)国家間で生じる紛争や問題に関する解決策を国際法、国際経済法、国際人権法の3法で調整を図る法律です。国際間の問題であることは国際私法と同一ではありますが、私人間ではなく、国家間の問題である点に大きな特徴があります。
国家間の問題であると聞くと、適法法が多く出題範囲も非常に多くなるのでは、と懸念する方も多いと思います。ですが、司法試験で出題される国際公法のうち、国際人権法・国際経済法については国際法の体系に属する者に限るという留保が付されているだけでなく(平成22年7月14日司法試験委員会決定)、実質的には国際経済法の出題はほぼないことから、国際公法の出題範囲は他の選択科目と比較しても、同等又はより狭い科目であるといえます。
3 国際公法の出題範囲、問題形式、配点
ここでは国際公法の出題範囲や問題形式、配点について詳しくご紹介します。
1 国際公法の出題範囲
国際公法の出題範囲は、上述したように国際法、国際人権法、国際経済法の3法が出題範囲とされ、さらに国際人権法・国際経済法については国際法の体系に属する者に限るという留保が付されているだけでなく(平成22年7月14日司法試験委員会決定)、実質的には国際経済法の出題はほぼありません。
そして、例年の傾向からすると、国際公法の出題範囲が現行の出題範囲から大きく変化することはないといえます。
2 国際公法の問題形式
問題形式は、例年の傾向では設問が3つ前後出題される傾向にあります(なお、令和5年度の司法試験では設問は4つ出題され、参考資料として選択議定書の抜粋が添付されていました)。
問題文の長さは、他の科目と比較して同程度の長さであり、国際公法であるから長文になっているというわけでもありません。
3 国際公法の配点
では、国際公法の配点についてご紹介します。
法務省が公表している問題文上、各設問の配点については記載されていないため、それぞれの設問にどれくらいの配点がなされているのかはわかりません。
100点満点であり、設問が3つ前後設けられていることからすると、一般的には各設問ごと均等の割合で配点が割り振られていると考えるのが通常です(もっとも、法務省が正式に公表をしていない以上、配点については確定的なことはわかりません)。
4 国際公法の勉強法
国際公法の勉強法について具体的にご紹介します。
国際公法は、受験者が少ないことからどのような勉強法をしたらよいのかあまり情報がないのが現状です。そのため、ただただやみくもに学習してしまうと非効率な学習になってしまうばかりか、そもそも国際公法を選択肢から除外してしまうこともあります。
そこで、以下ではなるべくわかりやすく、国際公法の勉強法について解説していきます。
1 過去問演習は必須です
国際公法の勉強で最も重要なのは、過去問演習です。
国際公法の演習本は非常に少なく、また司法試験との関係で良書とされる演習書もそこまで多くありません。
そこで、まずは何より司法試験の過去問を何度も解きましょう。演習書が少ない以上、司法試験の過去問については遡れるだけすべて問題を解答し、出題趣旨や採点実感まで丁寧に分析すべきです。国際公法の試験問題をみてわかるように実は国際公法は、過去に出題された問題が再度出題されることもあります(例えば、令和2年度の問題と平成24年度の問題を比較してみてください。出題されている論点がほぼ同一であることがわかります)。
このように、司法試験の国際公法の過去問は、他の選択科目と比較して、非常に有意義な情報が詰まっています。何度も繰り返し、過去問を解くことで出題傾向などもわかるだけでなく、出題者がどのような意図で問題を出題しているのか、どのような答案を作成すれば優良答案になるのかなど、詳細に知ることができます。
このように、国際公法で高得点を取るには、何よりも過去問演習を何度も繰り返すことが近道であり、かつ、確実な方法であるといえます。
2 司法試験用六法を参照し、過去に出題された条文や条約をマークする
また、国際公法の学習をするうえで大切なのは、司法試験用六法を参照し、過去問を何度も解く過程で出題された条文や条約をマークすることです。
国際公法は出題範囲が限られており、また過去に出題された論点も年度をおいて出題されることが多々あります。そのため、過去問演習をする際には司法試験用六法にその都度、マーキングをし、視覚的にどの条文・条約が頻繁に出題されているのかを司法試験用六法に情報一元化をすることが大切です。
そうすることで、司法試験で出題頻度の高い条文・条約(逆にほとんどマークされない条文は出題頻度が低い条文・条約になると言えます)をもれなく抑えることができ、勉強効率も上がります。そして、試験直前にはマークをしたところを重点的に復習すればよく、効率的かつ確実に高得点を狙うことができるようになります。
3 判例集を活用する
また、判例集を活用することもお勧めします。国際公法では、問題となる判例はそこまで多くありません。そのため、司法試験で出題された判例は特に重要であり、その都度、丁寧に分析をする必要があります。そして判例集を分析する際には、問題となった判例の判旨だけに着目せず、事案の内容にこそより重点的に着目することが大切です。
事案の内容から、なぜ本件では問題となったのか、各国がいかなる主張し、いかなる対立があるのかなどを知ることで司法試験の問題文から重要なる事実関係を抽出する力を養うことができます。
5まとめ
以上、司法試験の選択科目の1つである国際公法について、具体的な勉強方法や試験内容、出題傾向などについてご紹介しました。
国際公法は司法試験選択科目の中でも受験者が少ない科目の1つです。そのため、受験者間でのレベルも高いため、適切に対策を取らなければ合格点を勝ち取ることはできません。ですが、適切に対策をすれば安定して高得点が狙える科目でもあります。
ぜひ、本コラムを何度も読んで頂き、司法試験の国際公法の学習に役立てて頂ければと思います。